6-19.プロジェクトを成功に導く秘訣(18)プロトタイプを作成する

『6-18.プロジェクトを成功に導く秘訣(17)「スコープ」を曖昧にしない』の記事では、

  • 「やる、やらない」、「できる、できない」をハッキリさせて、お客様を含めたプロジェクトの関係者全員で、今回のプロジェクトで取り組む範囲を合意して欲しいこと
  • 「スコープ」を曖昧にしないためにも、何かに対して「やらない、できない」と言うのは当然のことと理解して、その理由を明確にして、関係者全員で納得して欲しいこと

をお伝えしました。

今回の記事も含めて、具体的に『プロジェクトを成功に導く秘訣』について、詳しく解説しますので、あなたが日常生活で、仕事をするうえで、「使える!」と思ったものは、どんどん実践してみてください!

『プロジェクトを成功に導く秘訣』の18個目は、

・プロトタイプを作成する

です。

ヤミシタ

プロジェクトでは、社内外を含めた多くの関係者で「協力して何かを作る」ということがほとんどですが、「何かを作る」際は、いきなり完成品を作るのではなく、まずは、試作品(プロトタイプ)を作ることで、意見を出し合い、認識を合わせて、完成品に反映させることが大切です!

「プロトタイプを作成する」とは?

「プロトタイプを作成する」とは、

  • 完成品の前に、試作品を作ること
  • 試作品で意見を出し合うこと
  • 試作品への意見を、完成品に反映させること

です。

完成品の前に、試作品を作ること

プロジェクトでは、新しい建物、新しいシステム、新しい商品やサービスなど、「協力して何かを作る」ということがほとんどですが、(古くなったものを改善する場合も含みます)

「何かを作る」際は、いきなり完成品を作るのではなく、まずは、試作品(プロトタイプ)を作ることが大切です。

あなた

毎回、試作品(プロトタイプ)を作らないとアカンのは、ちょっと手間やな、、、

と思われたかもしれませんが、

試作品と完成品は、完全には一致しない(できない)ものですが、試作品を作ってから完成品を作るのと、試作品を作らずに完成品を作るのでは、出来栄えが全く異なります。

ヤミシタ

試作品(プロトタイプ)を作らずに、完成品をいきなり作ることは、リスクが高すぎる(ほとんどの確率で作り直しが発生し、最悪の場合ボツになる)ので、ここは手間を惜しまずに、可能な限り完成品に近い試作品を作ることが大切です!

試作品で意見を出し合うこと

完成品の前に、試作品を作成したら、関係者間で意見を出し合うことが大切です。

ここでは、可能な限り多くの関係者からの意見を聞くことが重要ですが、特に、

・実際に、完成品を使う人の意見を聞くこと

が一番重要です。

あなた

実際に、完成品を使う人たちに意見を聞いたら、めちゃくちゃたくさんの意見が出てきそうやな、、、

と思われたかもしれませんが、

実際に完成品を使う人たちが、実際に使くことを想定しながら、アレコレ多くの意見を出してもらうことが、より良い完成品に仕上げるのに一番効果的であり、

実際に完成品を使う人たちとは、お客様や現場の方々となることがほとんどで、お客様や現場の意見をしっかりと拾い集めることが大切です。

ヤミシタ

実際に、試作品をお客様や現場の方々に見せて意見を聞くと、非常に多くの意見をもらえます!なかには鋭い指摘や批判もありますが、指摘や批判を受けるほど完成品がより良くなるので、たくさんの意見をありがたく頂戴することが大切です!

試作品への意見を、完成品に反映させること

関係者間で意見を出し合うことができれば、それらの意見をきちんと完成品に反映させることが大切です。

プロジェクトには、「期間」や「コスト」、「人」や「技術力」などの制約があるので、すべての意見を完成品に反映させることは、なかなか難しいですが、

  • お客様や現場の方々が、一番求めていることは何か?
  • お客様や現場の方々が、一番困っていることは何で、何を実現すれば喜ばれるのか?
  • 制約がある中で、どの意見を反映させることが、一番効果的か?

などを、関係者間で議論し、反映させる意見を絞り込んでいく必要があります。

意見を絞り込む際のポイントは、

  1. 意見が出し尽くされていること
  2. 意見を選択する基準を明確にすること
  3. 明確な基準に基づき、納得感の高い選択をすること

の3つです。

まずは、意見が出し尽くされていなければ、検討に抜け漏れが発生しますので、お客様や現場の方々から意見をヒアリングする場合も、忙しい人に時間を割いてもらうのは気が引けるものですが、

・完成品が出来てから、意見を言われても手遅れ

となるので、試作品の段階で、意見を出してもらうことが大切です。

意見が出し尽くされたら、「どの意見を完成品に反映させるのか?」の選択の基準が必要です。

選択の基準は、プロジェクトゴールに基づく必要があり、プロジェクトゴールの達成を意識したうえで、今回のプロジェクトでは、

プロジェクト
メンバー

「コスト重視なのか?」「品質重視なのか?」「操作性重視なのか?」「機能重視なのか?」「メンテナンス性重視なのか?」「セキュリティ重視なのか?」「省エネ重視なのか?」、、、

など、選択の基準を明確にすることが重要です。

そして、選択の基準を明確にしてから、選択の基準に基づき(声の大きい人の意見に左右されずに、、、)関係者間で納得感の高い選択を行います。

ヤミシタ

関係者からたくさんもらった試作品への意見を、完成品に反映させることが大切ですが、すべての意見を反映させることは不可能なので、意見を選択する基準を明確にして、明確な基準に基づき、公明正大に納得感の高い選択をしてください!

なぜ、「プロトタイプを作成する」ことが大切なのか?

なぜ、「プロトタイプを作成する」ことが大切なのか?というと、

  • モノが無いと意見を出しにくいから
  • モノを見ると意見が変わることがあるから
  • 関係者間の認識を合わせることができるから

です。

モノが無いと意見を出しにくいから

関係者間で意見を出し合う際に、何も「モノが無いと意見が出しにくい」ものです。

建物やシステム、商品やサービスなど、「何かを作る」際に、いきなり

意見を聞く側

次に作るモノに対して、実現したいことを考えて、意見を出してください!!

と言われても、

意見を出す側

いやいや、意見を出してと言われても、次に作るモノが、全然想像出来ないんですけど!?

となります。

何も「モノが無い」状態で、意見を求めると、そもそも意見を出しにくいですし、たとえ、意見を絞り出してもらえたとしても、漠然とした曖昧な意見しか出てこなくなります、、、

これが、試作品を見せながら、

意見を聞く側

次に作るモノを想像してもらうために、試作品を作ってみました! 良い点、悪い点、気になる点など、何でもご意見ください!!

と伝えると、水を得た魚のように、

意見を出す側

「●●は良いけど、▲▲はイマイチやね。もっと、■■にした方が良いわ!」「その新機能は面白いね!けど、一部の機能は使えへんわ!」「なるほど、こんな見た目になるんか、、、。それなら、ここはもっと大きく目立たせた方が良いで!」

など、具体的かつ的確に意見を出してもらえるようになります。

ヤミシタ

試作品(プロトタイプ)の威力は絶大です! 試作品を見る前までは、全然意見がなく沈黙していた人が、試作品を見た途端に、次から次へと意見を出すようになることは多々あります! たまに意見が止まらなくて困ることさえあります(笑)

モノを見ると意見が変わることがあるから

事前に、どれだけお客様や現場の方々から

完成品を使う側

「別に、モノを見なくても分かるわ!」「試作品を作る時間もエネルギー(気力と体力)も金も勿体無いから、すぐに完成品作って良いよ!!」

と言われていたとしても、モノを見ると、意見が変わることがあります。

完成品を作る側

「(試作品を作らずに)完成品が出来ました!」「OKでしょうか!?」

といきなり完成品を見せたら、

完成品を使う側

・・・。ごめん、想像していたのと違ったわ。やっぱり作り直せる、、、?

と言われたりします(泣)

それだけ、「頭の中だけで想像していること」と「実際のモノ」には、乖離があるということで、

頭の中だけで想像していることは、どうしても曖昧になります。

ヤミシタ

その曖昧なものを、試作品という形で具体化して、実際のモノを見ながら意見を聞くことがやはり大切で、「急がば回れ」の通り、いきなり完成品を作るよりも、試作品を作ってから完成品を作った方が、ゴールの達成には近道になります!

関係者間の認識を合わせることができるから

また、試作品を作ることで、関係者間の認識を合わせることができます。

「百聞は一見に如かず」で、どれだけ言葉で説明をしても、関係者間の認識を合わせることは難しいですが、試作品を見せることで、関係者間の認識を一発で合わせることができます。

何も「モノが無い」状態では、

・各自が持っているイメージを一致させることは難しい

です。

どれだけ、作ってもらう側(もしくは、作る側)のイメージが固まっており、試作品が無くても大丈夫と考えていても、作ってもらう側のイメージと、作る側のイメージを100%一致させることは、至難の業なので、

「作ってもらう側のイメージ」と「作る側のイメージ」を可能な限り近づけるためにも、試作品を作り、関係者間でモノを見ながら、認識を合わせることが大切です。

ヤミシタ

実は、試作品があったとしても、作ってもらう側のイメージと、作る側のイメージを100%一致させることは困難なので、試作品がなかった場合は、作ってもらう側と作る側のイメージは、ほとんど合致していないと思った方が良いです!

どのように、「プロトタイプを作成する」と良いのか?

どのように、「プロトタイプを作成する」と良いのか?というと、

  • 便利な機器(ハードウェア)を利用する
  • 便利なソフトウェアを利用する
  • 紙に書く!紙に出力する!

と良いです。

便利な機器(ハードウェア)を利用する

最近では、試作品を作成するための、便利な機器(ハードウェア)が開発されているので、利用しない手はないです。

ものづくりの現場では、3Dプリンターが急速に普及しています。

3Dプリンターは、実際の素材(金属など)で時間をかけて完成品を作る前に、樹脂などの安価な素材で試作品を素早く作ることが可能です。

3Dプリンターの急速な普及は、

  • いかに、頭の中で想像することが曖昧(不確か)で
  • いかに、関係者間で認識を合わせることが難しく(作ってもらう側と作る側のイメージを合わせることが難しく)
  • モノを見てこそ、分かることがある(意見が出せる)

ということを、物語っています。

ヤミシタ

まだまだ、3Dプリンターで試作品を作るのにも、時間が掛かるものですが、(樹脂を固めていくのにも、時間が必要なので)完成品を何度も作り直すよりは、時間も手間もお金も絶対に安いので、3Dプリンターが爆発的に普及しています!

便利なソフトウェアを利用する

便利な機器(ハードウェア)だけではなく、便利なソフトウェアも、続々と開発されているので、利用しない手はないです。

私は、最近、新しい建物の建設プロジェクトに参加した際に、ゼネコンの方々が利用していたソフトウェアに感銘を受けました。

建物は、なかなか試作品を作るのが難しく、(1部屋作ってみるとか、1フロア作ってみるとかができないので、、、)

作ってもらう側と作る側の認識を合わせることも難しいものですが、ソフトウェア上で、寸法も色合いもすべて反映させたうえで、立体的に建物の完成イメージを確認することができました。

ソフトウェア上で、ちょっとクリック操作するだけで、

  • 真上からでも、真横からでも、斜めからでも(どんな角度からでも立体的に見れる
  • 床の素材、壁の素材、屋根の素材を、すぐに交換してイメージを確認できる
  • 部屋や廊下に、設置する設備(機械や什器)も寸法を合わせて配置できる

ので、関係者間での認識合わせが、非常に円滑に行われていました。

実際の大きさや、質感、色味、肌触りなどは、やはり完成した建物でないと分からないことも残りますが、(質感、色味、肌触りなどは、サンプルを用意して確認することも可能です)

「完成した建物」と「ソフトウェア上で確認していた建物」の間に大きな差異(違和感)はなく、ほとんど想像通りに建物が出来上がっていました!

ヤミシタ

竣工後に、ゼネコンの方々に話を聞くと、「ソフトウェアを活用することで、お客様との認識のズレの多くを無くすことができるようになりましたが、それでも現場では、細部の調整などが残っていて大変なんですよ!」と仰っていました、、、

紙に書く!紙に出力する!

便利な機器(ハードウェア)や便利なソフトウェアが使えない場合でも、システム開発などでは、

  • 画面のイメージを紙に書く、紙に出力する
  • 紙を使って、画面の見栄えや文字の大きさを確認する
  • 紙を使って、画面の遷移やシステムの操作方法をイメージする

ことで、関係者間の認識を合わせることが可能です。

『ブログ運営者のプロフィールとは?どんな人生を生き、今何をしているのか?』の記事にも書いているのですが、

私は、システム開発のプロジェクトマネージャーを経験しており、その時は、システム開発の全体取り纏め+設計を担当し、

その際、関係者間の認識を合わせるために、パワーポイントで新しく開発するシステムの画面をすべて作成して、紙に出力しました。

紙に出力する際に、実際のモニターの画面サイズ、タブレットやスマートフォンの画面サイズに合わせることで、お客様に「画面の見栄えや文字の大きさ」や「文字の色やフォント」、「ボタンの押しやすさ」や「ボタンの配置」などに関して、多くの意見をもらうことができました。

また、システムの画面をすべて紙に出力し、

  • この画面では、このようなボタンがあり、このような機能が使えます
  • このボタンを押すと、このような画面に変わり、次は、この機能が使えます
  • この画面が起点となり、これだけの画面に遷移することができます

など、実際のシステムでは無いものの、システムの全体構成と操作の流れ、各画面で使える機能を、具体的に説明することで、完成品を作る前に、システムのイメージを持ってもらい、

「実際にどう使うのか?」をイメージしながら、多くのフィードバックをもらい、完成品に反映させることができました。

ヤミシタ

紙の出力であっても、試作品(プロトタイプ)を作ると、実際に使うお客様、現場の方々から多くの意見をもらうことができ、その意見をしっかり反映させて完成品を作ることで、価値のあるシステム(モノ)を提供することが可能です!

まとめ

  • 完成品の前に、必ず試作品を作ること。試作品で意見を出し合い、完成品に反映させること
  • 実際に使うお客様や現場の意見を拾い集めること
  • 言葉だけではなく、関係者間で、試作品(モノ)を見ながら認識を合わせること

便利な機器(ハードウェア)やソフトウェアを利用して、なるべく完成品と近い試作品を作るとより良いですが、例え、紙で出力したとしても、試作品を作ることには大きな価値があります。

試作品を作ることで、実際に使うお客様や現場の意見を多く取り入れ、お客様や現場の方々にとって、本当に価値のあるモノを提供できるようになることで、あなたの人生がより良いものになることを、心から願っています!

6.プロジェクトを完遂したい