『6-6.プロジェクトを成功に導く秘訣(5)意思決定の「納得感」を高める』の記事では、
- 「プロジェクト」は、意思決定の連続であり、プロジェクトゴールを達成するために、複数の選択肢から、「納得感」の高い最善の選択を行って欲しいこと
- 意思決定の「納得感」を高めるために、議論をする際は、適切な「論点」を設定し、「選択肢」を出しきり、納得できる「理由」と「根拠」かを確認して欲しいこと
をお伝えしました。
今回の記事も含めて、具体的に『プロジェクトを成功に導く秘訣』について、詳しく解説しますので、あなたが日常生活で、仕事をするうえで、「使える!」と思ったものは、どんどん実践してみてください!
『プロジェクトを成功に導く秘訣』の6つ目は、
・「リスク管理」では「発生確率」と「影響度」を考慮する
です。
「リスク管理」を適切に行うことで、「プロジェクト」に不測の事態が起こった場合でも、冷静に、素早く対処し、被害を最小限に抑えることができます! リスクを洗い出す際は、「超マイナス思考」になり、徹底的にネガティブなことを考えて、リスクを出し尽くすことが大切です!
目次
「リスク管理」とは?
「リスク管理」とは、事前にリスクに対する対策方針と対策内容を決めておくことで、実際にリスクが発生した場合でも、
- 「プロジェクト」に与えるリスクの影響を最小限に抑えること
です。
「プロジェクト」に与えるリスクの影響を最小限に抑えること
そもそも、「リスク」ってどういう意味、、、?
と思われたかもしれませんが、
「リスク」とは、
・危険。または、危険が発生する可能性
のことです。
そして、「リスク管理」とは、
「プロジェクト」の継続が困難になるような、「プロジェクト」を円滑に進めることが難しくなるような、リスク=危険(危険が発生する可能性)にはどのようなものが存在するかを洗い出し、
事前にそのリスク=危険(危険が発生する可能性)に対する対策方針と対策内容を決めておくことで、実際にリスクが発生した場合に、速やかに対策を実施し、「プロジェクト」に与えるリスクの影響を最小限に抑えることとなります。
『6-1.なぜ、「プロジェクト」を成功させることは難しいのか?』の記事でも書いているのですが、
「プロジェクト」では、不確実性がつきものであり、「プロジェクト」の計画段階で、「プロジェクト」の実行段階で発生するすべてのことを予想することは到底不可能で、
「やってみなければ分からない」「やってみて初めて分かる」という部分が必ず残ります。
そこで、あらかじめ発生する可能性があるリスクを洗い出しておき、事前に対策方針と対策内容を決めておくことで、
実際にリスクが発生した場合でも、慌てず、騒がず、平常心で速やかに対策を実施することで、被害を最小限に抑えるという「リスク管理」の考え方が重要になります。
「リスク管理」は、『3-7.心をフロー状態に保つ考え方(3)超マイナス思考で備える』の記事でご紹介した、「超マイナス思考で備える」のプロジェクト版と言えます! 「プロジェクト」においても、「超マイナス思考」になり、事前に、徹底的にネガティブなことを想定して、それらに対する前向きな回答を用意しておくことが大切です!
なぜ、「リスク管理では発生確率と影響度を考慮する」と良いのか?
なぜ、「リスク管理では発生確率と影響度を考慮する」と良いのか?というと、
- リスク対策の優先順位を明確な基準で決められるから
です。
リスク対策の優先順位を明確な基準で決められるから
「プロジェクト」で発生する可能性があるリスクを洗い出した後、対策方針と対策内容を決める際には、
・どのリスクへの対応が優先されるべきか?
という優先順位を決めてから、対策を検討して、決定・実行することが大切です。
えっ!? リスクに優先順位とかあるの? 全部に対策が必要なのでは??
と思われたかもしれませんが、
「プロジェクト」では、時間、お金、人に限りがあるので、課題に対して優先順位を決めたのと同様に、リスクに対しても優先順位を決める必要があります。
もちろん、できる限り多くのリスク対策を実行できれば良いのですが、
すべての課題を解決できないのと同様に、すべてのリスク対策を実行することはできません。
そして、リスクに対する優先順位を決める際に、「発生確率」と「影響度」を考慮することで、優先順位を決める基準を明確にすることが可能です。
「発生確率」とは、
・プロジェクト期間中にどのぐらいの割合で発生するのか?
のことであり、
「発生確率」を考慮するとは、
- プロジェクト期間中にほとんど発生しないものなのか?
- 50%程度発生するものなのか?
- それとも、頻繁に発生するものなのか?
ということを考えることになります。
「影響度」とは、
・発生した際に、「プロジェクト」にどれほどのマイナスの影響を与えるか?
のことであり、
「影響度」を考慮するとは、
- 「プロジェクト」の継続が不可能になるほどの影響か?
- 「プロジェクト」の期限やコストの超過につながるような影響か?
- それとも、プロジェクトメンバーの負荷は高まるが、期限やコストの超過までにはならないような影響か?
ということを考えることです。
課題の優先順位をつける場合と同様に、リスクの優先順位をつける場合でも、基準を明確にすることで「納得感」を高めることができます。
例えば、「発生確率」と「影響度」にそれぞれ下記のような点数をつけて、その合計でリスクの優先順位を決めると、明確な基準で優先順位を決定することができ、「納得感」も高まります。
- 発生確率:プロジェクト期間中にほぼ発生する「3点」、50%程度発生する「2点」、ほとんど発生しない 「1点」
- 影響度:プロジェクトの継続が不可能になるレベル「3点」、期限やコストが超過するレベル「2点」、各メンバーの負荷が高くなるが、期限やコストは超過しないレベル「1点」
「プロジェクト期間中にほぼ発生する」かつ「プロジェクトの継続が不可能になるレベル」のリスクは、すぐにでも対策を決定して、即実行が必要です。逆に、「ほとんど発生しない」かつ「各メンバーの負荷が高くなるが、期限やコストは超過しないレベル」のリスクは、対策を考えることすら、保留しておいて良いです!
リスクの対策方針とは?
リスクに対する優先順位が決まったら、優先順位が高いものから、対策方針と対策内容を決めることになりますが、リスクの対策方針には、大きく下記の4つがありますので、
- リスクの回避
- リスクの転嫁
- リスクの軽減
- リスクの受容
それぞれの対策方針について、詳しく解説します。
「リスクの回避」とは?
「リスクの回避」とは、危険そのものを避ける、危険が発生する要因を取り除くことです。
例えば、「新しい技術を用いること」には、成功すれば大きな価値はあるものの、失敗した場合は、期限もコストも超過し、そして、品質も「プロジェクト」に要求されるものにはならないというリスクがあるので、
「今回のプロジェクトでは、新しい技術を用いることをやめる」というのが、「リスクの回避」になります。
個人的には、リスクを覚悟して「新しい技術を用いること」に積極的に挑戦すべきだと思います(笑) しかし、「プロジェクト」の状況(背景)によって、「新しいことへの挑戦」よりも「期限とコストの厳守」が優先されることもあるので、「プロジェクト」毎にリスクに対する対策方針を検討・決定することが大切です!
「リスクの転嫁」とは?
「リスクの転嫁」とは、リスクを外部に委託することです。
例えば、データが保管されるサーバ(高性能なコンピューターのことです)を、より災害対策が完備されているデーターセンターに預けることなどが、「リスクの転嫁」になります。
データセンターにサーバ(高性能コンピューター)を預けることで、災害によりデータが消失してしまうというリスクを、外部に委託しています。
昔は、データセンターなどの外部に自社のデータを置くことに、情報漏洩などのリスクを感じて、自社にサーバを置くことが多かったですが、現在では、データセンターの方が災害対策や情報漏洩対策なども完備されており、自社にサーバを置く方がリスクが高くなっています!
「リスクの軽減」とは?
「リスクの軽減」とは、リスクの発生確率を下げること、または、リスクの影響度を小さくすることです。
例えば、ある要求に対する解決策を実行する担当者に、その要求に対する解決策を実行した経験が乏しい、または、経験が無い場合に、
事前に経験者から教えてもらう時間を設けることや、経験者を副担当としてつけて支援することが、「リスクの軽減」になります。
これは、担当者のレベルアップや、フォローを行うことで、期限の超過や、要求事項を満たせなくなるというリスクの発生確率を下げています。
また、リスクが発生した際には、すぐにフォローを行うことで、影響度を小さくすることも可能です。
プロジェクトメンバー間の情報共有を徹底して、コミュニケーションを密にすることで、お互いに協力しながら課題解決を行い、スケジュールの遅延を無くしていくことが、「リスクの軽減」そのものと言えます!
「リスクの受容」とは?
「リスクの受容」とは、文字の通りリスクを受け入れることです。
これは、リスクに対する対策をアレコレ講じるよりも、受け入れてしまった方が、時間やコストの面からも良いと判断した際にとる対策方針です。
この場合、リスクが発生してから具体的な対策を考えるか、リスクが発生しても何も対策を行わないことになります。
例えば、古いバージョンのブラウザ(IE:Internet Explorerなど)を業務上使わざる負えない人が、古いバージョンのブラウザで見た場合だけ、画面表示が崩れてしまう(文字が読みづらくなってしまう)というリスクに対して、そのままにしておくことは、「リスクの受容」になります。
実際に、画面表示が崩れた場合に、「どのような対策を行うか?」それとも「何も対策せずにそのまま使ってもらうか?」などを考えます。
「リスクを受け入れる」と聞くと少し怖く感じるかもしれませんが、「発生確率」が低く「影響度」も小さいリスクに対しては、「リスクの受容」の対策方針とすることが多いです! 「そもそも考えている時間が勿体ない!」というリスクもあるものなので(笑)
どのように、「リスク管理」を行うと良いのか?
どのように、「リスク管理」を行うと良いのか?というと、
- リスクの優先順位を考慮して、対策方針と対策内容を決定・実行する
と良いです。
リスクの優先順位を考慮して、対策方針と対策内容を決定・実行する
リスクに対する優先順位が決まったら、優先順位が高いものから、対策方針と対策内容を決めることになりますが、
- まずは、4つのうちどの対策方針とするか?
- そして、具体的にどのような対策内容とするか?
を順番に検討すると良いです。
リスクの優先順位を考慮して、事前にリスクに対する対策方針と対策内容を決めておくことで、リスクが現実に発生してしまった場合でも、速やかに対処することが可能になります。
また、「発生確率」も高く、「影響度」も大きいリスクに関しては、リスクが判明した時点で、リスクに気がついた時点で、すぐにでも対策を決め、それを実施する必要があります。
例えば、プロジェクトの途中で、プロジェクトオーナー(プロジェクト実行のためのお金を出してくれる責任者(基本的に経営層が担う))が交代することが判明した場合は、
次のプロジェクトオーナーから
この「プロジェクト」は予算の都合上、中止します!
などと突然言われて、プロジェクトの継続が不可能になる可能性もあるので、
「発生確率」も高く、「影響度」も大きいリスクとなり、すぐにでも、交代する前の段階で、次のプロジェクトオーナーにプロジェクトの意義を説明し、継続の合意を得ておく必要があります。
あと、「発生確率」も低く、「影響度」も小さいリスクに関しては、通常、「リスクの受容」の対策方針をとることがほとんどで、
リスクが発生した場合に、何かしらの対策を行う場合は、
少し負荷があがるけど、今いるメンバーで何とか乗り切るしかないな、、、
となります(泣)
ぜひ、あなたの参画する「プロジェクト」においても、「発生確率」と「影響度」を考慮してリスクに対する優先順位を決めて「リスク管理」を行い、事前に対策方針と対策内容を決定しておくことで、「プロジェクト」の継続が困難になるようなリスクに対しも、被害を最小限に留めてください!
まとめ
- 「リスク管理」とは、事前にリスク=危険(危険が発生する可能性)を洗い出し、その対策を決めておくことで、実際に危険が発生した場合に、速やかに対策を実施し、「プロジェクト」に与えるリスクの影響を最小限に抑えること
- 「リスク管理」では、「発生確率」と「影響度」を考慮することで、リスクの優先順位を明確な基準で決めることができること
- リスクの対策方針には、リスクの回避、転嫁、軽減、受容の4つがあること
- リスクの優先順位を考慮して、4つの対策方針と対策内容を事前に決めておくこと
「リスク管理」を適切に行うことで、「プロジェクト」の危機に直面した場合でも、冷静に、迅速に、そして、最小限の被害で乗り越えれるようになり、あなたがプロジェクトゴールを達成できることを、そして、あなたの人生がより良いものになることを、心から願っています!